八重山「選定」:自由法曹団の要請

八重山採択地区協議会が育鵬社版公民教科書を選定したことに抗議し、石垣市、竹富町、与那国町の各教育委員に
同教科書を採択しないように要請する

 私たち自由法曹団は、去る6月29日付で、石垣市、竹富町、与那国町の各教育委員会に対し、「法律家による『つくる会』系公民教科書(育鵬社・自由社)の検証」と題する意見書を添えて、育鵬社・自由社版の教科書を採択しないよう要請した。
 しかるに昨日、八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)は、2012年4月から公立中学校で使用する公民教科書として、育鵬社版公民教科書を選定した。
 育鵬社版公民教科書は、「自虐史観からの脱却」を謳って日本の侵略戦争の歴史を否定しようとする「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書であり、その内容は、天皇を中心とする日本の伝統を情緒的に強調し、日本国憲法を押し付けられた憲法であって「改正」すべきものと教え、自衛隊を海外に派遣する必要性を強調する内容を基軸とするものであり、一言でいえば、日本国憲法の基本原則(国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重)をことごとく軽視し、「戦争をする国」を担う国民を育成しようとする教科書である。
 このような内容の育鵬社の公民教科書に対しては、憲法に対する見方があまりにも一面的で多くの誤りを含むものであることから、多数の有識者がその採択に反対の声をあげており、また全国各地でその採択について多数の市民から強い反対が出されていたところである。今回の教科書選定は、このような強い反対の声を完全に無視したものである。
 さらに、八重山採択地区協議会の今回の選定手続は、規約に定めた役員会での手続きをとらずに会長の独断で調査員を選任したほか、現場の声を反映するために行われていた調査員(教員)による順位付けを廃止し、選定を非公開で無記名投票にするなどのルール変更を行った。これらは教科書選定に教育現場の声を反映しづらくし、かつ選定過程の透明性を後退させるものであり、当初より国民的な批判の強い「つくる会」系教科書の選定を行うための手続変更であったといわざるを得ない。現に調査員が推薦した教科書の中に含まれていない育鵬社の公民教科書を選定するという前例のない暴挙は、そのことを証明するとともに、現場教員の意向や専門性を完全に無視するものである。このように育鵬社の公民教科書の選定は、教科書選定手続の適正さにおいても重大な疑念がある。
 選定された育鵬社版公民教科書で教育を受けねばならない子ども自身は、未だ批判能力の十分ではない中学生であり、同教科書による偏向した教育を受けることによって、子ども自身に回復しがたい重大な悪影響を及ぼす危険性が高い。また、その内容が、アジア諸国の蔑視、侵略戦争の肯定を基軸とするものであるため、日本の現在と将来に重大な問題を引き起こし、国内はもちろん、アジア近隣諸国からも厳しい批判を受けることは確実である。
 今後、26日に石垣市と与那国町、29日に竹富町がそれぞれ教育委員会を開き、採択審議する予定であるが、各教育委員は、採択地区協議会の結論に拘泥することなく、十分な調査、研究を行った上で改めて、中学生の学習に相応しい教科書の採択を検討し、上記のような問題のある「つくる会」系教科書の採択はすべきでない。
われわれ自由法曹団は、八重山採択地区協議会の今回の公民教科書の選定に対し、抗議するとともに、石垣市、竹富町、与那国町の各教委育委員会に対し、改めて十分な調査研究に基づく採択をやり直し、「つくる会」系教科書を採択しないよう改めて強く要請するものである。

2011年8月24日
自由法曹団
団長菊池紘
自由法曹団沖縄支部
支部長新垣勉
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