2016年度使用中学校教科書の採択に関する要望書

大阪府内の各市町村教委に下記の要望書を送付しました。

2016年度使用中学校教科書の採択に関する要望書

                                   2015年5月23日
教育委員会
 教育長・教育委員長 様
教科用図書選定委員会 様
                                                                                           子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

 2016年度から使用される教科書の採択に向けて、貴教育委員会におかれましても採択過程に入っていることと存じます。今年の中学校教科書採択は新教育委員会制度への移行後初めての採択であり、教科書採択への首長の関与はあるのか、教科書採択の独立性・透明性は維持されるのか、子どもたちの教育に直接携わる教員の意見がどのように反映されるのか、注目されています。
 4月6日に公表された教科書検定では、昨年の教科書検定基準の改定に基づき政府見解を書かせる検定が行わました。そのような中で日本教育再生機構及び改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会が編集した育鵬社版歴史・公民教科書と新しい歴史教科書をつくる会が編集した自由社版歴史教科書が共に検定合格しました。私たちは、憲法の理念や近隣諸国との友好関係を深める教科書を求める観点から、これら2社の教科書が採択されることに強い危惧の念をもっています。
また私たちは、現場教員の意見を尊重し公正かつ民主的に教科書採択が行われるよう貴教育委員会に要望するとともに、その目的達成のために、貴教育委員会の回答をお願いいたします。ご多忙と思いますが、回答を6月14日までにお願いいたします。

【要望書】

1.総合教育会議では、教科書採択に関わる内容を協議題にせず、「大綱」に教科書採択方針を盛り込まないでください。また、総合教育会議を公開し傍聴できるようにするとともに、配付資料と会議録の公開をするように求めます。
 総合教育会議の開催日程、参加メンバー、協議題、会議の公開等、具体的なことについての検討状況を教えてください。

2.「人権の取扱い」を重視した調査研究を行ってください。
 貴教育委員会が作成する「教科書を調査研究する観点」には、従来から「人権の取扱い」が項目に含まれています。大阪では、部落問題や在日外国人問題、障がい者問題などさまざまな人権に関わる問題を教育課題として積極的に取り上げられてきました。そのため、「人権の取扱い」は、大阪の教育にとって極めて重要な観点になると考えています。今年の中学校採択においてもこの観点を重視するよう要望します。

3.アジア諸国との相互理解を進める教科書を選ぶ採択方針を作成してください。
 1982年の教科書問題を発端にして文部省(当時)は、教科書検定基準の中に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という近隣諸国条項を設けました。当時の宮沢官房長官は、「過去において、我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んで来た」とし、この精神が「我が国の学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきものである」と、「近隣諸国条項」を設けた趣旨を説明しました。この「近隣諸国条項」は現在に至るまでアジアとの友好関係を発展させていくための重要な観点として維持されてきたところです。
 また、国連子どもの権利委員会の日本に対する政府報告書審査最終所見(2010年6月15日)でも、「日本の歴史教科書が、歴史的事実に関して日本政府による解釈のみを反映しているため、アジア・太平洋地域における国々の子どもの相互理解 を促進していないとの情報を懸念する。」と勧告しています。
 これからの未来を担う子どもたちが、アジアとの友好関係を築いていくことは極めて重要なことです。そのために正しい歴史認識を伝えていくことは教育の重要な役割です。
 とりわけ大阪では、在日韓国朝鮮人をはじめ多くの外国にルーツを持つ子どもたちが学校に通っています。近隣諸国との友好関係を発展させるために、自国中心の歴史認識ではなく、過去の日本の侵略と植民地支配の歴史を真摯に受け止める教育が必要です。
 
4.偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を採択基準に入れないでください。
 教育基本法には、「愛国心」に繋がる目標がありますが、そこには「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が同時に明記され、偏狭なナショナリズムに陥ることがないように求めています。偏狭なナショナリズムを喚起する教科書が何をもたらしたのか、戦前の教育が明瞭に示しているからです。

5.採択方針の中に「教員の意見を尊重した採択」を明記してください。
 ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」には、「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。」と明記されています。「教員の意見を尊重した採択」は、国際基準であり、教科書を教員が選べないのは先進国の中では中国と日本ぐらいになっています。

6.教科書採択過程を市民に公開してください。
 教育委員会議の開催日と議題を事前に市民に周知し、傍聴の条件と機会を拡大してください。教科書採択には市民の関心が高く、また教科書会社も傍聴に来ることから傍聴人数を制限している場合、市民が傍聴できないという事態が起こります。そういうことがないよう、傍聴希望者全員が入れる大きな部屋を用意し、マイクを使用するなどの配慮をお願いします。また採択関係資料を傍聴者にも配布してください。教育委員会議教科書採択過程の情報公開に対しても、公文書として所有した段階で随時公開してください。市民(団体)からの要望や質問に対して誠実に回答してください。

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