中学校社会科教科書検定結果にたいする私たちの見解

中学校社会科教科書検定結果にたいする私たちの見解
      2015年4月8日  子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会

1.安倍政権の歴史認識を強制した文部科学省による検定

(1)<領土問題で政府見解を一方的に記述させる>
今回、各社は歴史的分野にも領土問題を記述しました。しかもそのほとんどは政府の見解を忠実に書いたものです。これは一見教科書発行会社の自主的な行為にみえますが、その実文科省が領土問題を政府見解に沿って記述するように、学習指導要領の解説書などを通じて強く指導してきたからです。
領土問題には歴史的背景があり、それぞれの国に言い分があります。それを公平に紹介することもなく自国の主張のみを教えることは、アジアの人々との友好をさまたげ、ヘイトスピーチの温床をつくることにしかなりません。

(2)<新検定基準の押しつけ>
昨年、文科省は新検定基準として「通説的な見解がない数字を記述するときはそのことを明示する」ことを盛り込みました。今回それによって清水書院は関東大震災の朝鮮人虐殺数について「数千人にものぼった」という記述を、「数千人になるともいわれるが、人数については通説はない」と書きかえさせられました。しかし「数千人」という数は幅のある表現であり、これまでの研究ではもっと多いといわれています。「通説はない」とあえて記述させることによって、過去の加害の事実を小さくみせようとする安倍政権の意図が露骨にあらわれています。

(3)<民衆・子どもの目線から編集された学び舎は最初不合格に>
今回初めて検定を受けた学び舎の歴史教科書は、民衆の観点から記述されており、子どもたちが歴史を生き生きと学べる教科書です。日本の侵略戦争・加害・戦後補償についてもきちんと書かれており、唯一、日本軍「慰安婦」についても記述されていました。しかしこの学び舎は最初不合格となり、かなりの書き換えをし、ようやく合格となりました。「慰安婦」についても「慰安婦」の言葉を削除し、河野談話については「現在、日本政府は『軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような資料は発見されていない』との見解を表明している」と政府見解を追加しました。しかしながら、「問い直される戦後」をテーマとして、元「慰安婦」の金学順さんや「河野談話」を取り上げた教科書が登場したことは画期的なことです。

2.愛国心教育を推進する安倍政権の意図をもっとも体現した育鵬社・自由社教科書

(1)<「戦争のできる国」の「戦争のできる国民づくり」のための教科書という本質は変わらない>
   育鵬社の教科書に共通するのは次の特徴です。
   歴史では
 ①過去の侵略戦争・植民地支配の加害の事実をできるだけ教えない
  ②戦争を美しく感動的に描く
  ③日本の歴史を、天皇とその臣下の活躍の歴史として描く
  ④日本の文化は世界一と教え、自己中心的な愛国心を刷り込む

   公民では
  ①人権よりも義務が大切と教える
  ②国民の最大の義務は国防であると教える
  ③原発推進

  自由社は今回歴史教科書しか改訂しませんでしたが、育鵬社教科書をいっそう極端にしたような内容です。

3.安倍政権の広報誌と化した育鵬社公民教科書

(1)<安倍首相の写真が満載>
今回の改訂版育鵬社教科書には安倍首相の写真が12枚もあり、グラビアのアベノミクスで株価上昇という写真なども含めると、安倍政権関係の写真が15枚もあります。こんな特定の政治家を応援する教科書は、教育の中立性・公正性に反しており、教科書としてまったく不適切です。

(2)<天皇の写真が11枚、神社・祭礼の写真が15枚>
今回も多いのが天皇と神社関係の写真です。日本の歴史・文化の中心に常に天皇がおり、神道こそ日本人のこころの拠り所であるという安倍首相と日本会議の主張がストレートに反映されているのが育鵬社公民教科書です。天皇をここまで大きく取り上げるのは国民主権の原則に反しており、神道という特定の宗教を大きく取り上げるのは、多様な子どもが学ぶ公立学校の教科書としてふさわしくありません。

(3)<人権への配慮がまったくない>
育鵬社公民教科書には「基本的人権の尊重」の項目のなかに、「権利の対立と合意」のコラムがありますが、そこでは「社会全体の秩序や利益を侵す場合には、個人の権利や自由の行使が制限されることもある」という例として、「大阪市の全職員への入れ墨調査」の新聞記事が取り上げられています。入れ墨調査はすでに裁判で人権侵害だと判決が出ています。橋下市長は最高裁までやと言っていますが、入れ墨調査は世論からきびしく批判されてきたものです。にもかかわらず、人権の制限の例として教科書に取り上げるのは不適切です。ここには検定意見がついていないので、文科省の検定そのものが問われます。また、育鵬社公民教科書は少年犯罪には厳しく対処せよという姿勢で記述されており、光市母子
殺人事件で被告(事件当時少年)の実名・顔写真を載せた新聞記事をそのまま掲載しました。これには検定意見がつき、育鵬社はぼかしを入れましたが、このほかにも中学三年生の顔写真を載せることの是非を考えさせようとしたりしています。これは子どもでも重大犯罪を犯せば世間に顔をさらすことになると子どもを脅しているのと同じであり、まったく教育的ではありません。

入れ墨記述a

(4)<福島原発事故への反省がなく相変らず原発推進>
現行の育鵬社公民教科書では「原発は国策であるから国民は原発と共生しなければならない」と教える特集を組んでいましたが、今回この教材は削除されました。代わって登場したのが次の記述でした。

「これからも、エネルギーの一部は原子力発電に頼らざるをえないかもしれません。しかし、今回の大津波被害の教訓を生かし、海岸沿いの低地の大型原子力発電所に頼るのではなく、原子力発電所の小型化や地下設置もふくめて大幅な見直しが必要です。」(下線は引用者)

さすがにこれには検定意見がつき、育鵬社は次のように記述を修正しました。

「私たちは今回の事故の教訓を生かし、原子力発電への依存をできるかぎり減らしつつ、放射性廃棄物の処理問題や火力発電所の効率化、安定して低コストにエネルギーを供給できるしくみ作り、地球温暖化対策などに取り組んでいかなければなりません。」

  修正の結果、育鵬社の原発記述は一見無難なものに変わりましたが、原発はやめないという安倍内閣の政策と同じであることに変わりはありません。いやもともと安倍内閣が進めたいことを正直に書いたのが育鵬社でした。しかし、教科書は福島や他地域に避難している子どもも使います。受けた放射能被害が将来どのようにあらわれるのかと怯えている子どももいます。今なお、故郷に帰れない、家族がばらばらの生活を強いられている子どもたちに、しかも次の東海大地震や南海大地震がいつ来るかといわれているこの日本で、「原発を小型化し、地下に設置して受け入れよ」という記述をもともと書いていたのが育鵬社公民教科書だということを、私たちはすべての人に認識してもらいたいと考えます。

以上、このように問題点の多い育鵬社歴史・公民教科書および自由社歴史・公民教科書は、子どもたちが学ぶ教科書としてまったくふさわしくありません。したがって私たちは今後このような教科書が採択されることのないように、各地の教育委員会にはたらきかけていく決意です。
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