2012年度中学校用検定済み歴史教科書の沖縄戦記述に対する声明

2011年4月5日
2012年度中学校用検定済み歴史教科書の沖縄戦記述に対する声明

「9.29県民大会決議」を実現させる会
沖縄県老人クラブ連合会
沖縄県PTA連合会
沖縄県高等学校PTA連合会
沖縄県婦人連合会
沖縄戦を語り継ぐ女子学徒有志の会
沖縄県青年団協議会
沖縄県子ども会育成連絡協議会

 文部科学省は本年3月30日、2010年度教科書検定結果を公表し、2012年度用中学歴史教科書の沖縄戦記述などが明らかにされた。本日までに判明した今回の検定内容を検討した結果、我々沖縄の「『9.29県民大会決議』を実現させる会」は、以下の通り一定の評価をすると同時になお改善されるべき点、さらには早急に是正するべき点が多数あることを確認した。

 よって、それらについて以下の通り我々の検討結果を公表し、本年8月末までの教科書採択さらには本年度末頃の生徒用教科書(供給本)印刷までに、改善及び是正の措置が講じられるよう、教科書執筆者、教科書発行社及び文科科学省と全国の教育委員会等にしかるべき対応を求めるため、ここに声明を発表することとした。

 我々の検討結果は以下の通り

1.まず3月30日に文科省は、2009年度の検定結果公表の際に初めて実行した検定の「調査意見書(検定官が作成した検定意見の原案)」が「検定意見」に占める科目別割合の公表を今回も実行した。その結果、今回も前回同様にその割合が全体で9割弱であり、検定審議会の自主自立性が事実上は有名無実であることが再度明らかになった。

 これにより検定審議会は文科省から自立した専門的学術組織であるとしてきた文科省のこれまでの説明が事実に反していることが改めて明確にされた。

 この件は、2007年の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」歪曲検定事件に対する沖縄県民総ぐるみの抗議の声に抵抗しきれず、文科省が当該の「調査意見書」公表に踏み切らされたのが発端であったことを我々は忘れていない。今回の公表によって「調査意見書」の全面公開が今後も継続して実施される見通しとなった。検定審議会は文科省から自立した組織としてきたこれまでの文科省による説明がいつわりであったことを白日の下に晒したこの一連の動きはこのように沖縄県民の怒りの声から産み出されたものであった。

 半世紀以上もの間、教科書裁判等を通じても打破できなかった検定制度の密室性に対し、大きな風穴をあけたのも2007年の県民大会に集結した怒りの声とそれ以来の息の長い取り組みがあってこそである。

 主権在民社会における主権者として政治・行政の不公正を是正する役割をこのように果たしつつあることを、すべての県民の方々と共に我々は誇りとしたい。

2.次に、今回検定に合格した中学歴史教科書7冊のすべてが沖縄戦記述においては、「集団自決」に言及している点は、現行版9冊の半数に及ばなかった状況から改善されたものとして、評価できる。しかし、その記述内容では「9.29県民大会決議」において最も強く要求している日本軍の「強制」を明記したものが1冊もないことに、我々はきわめて強い失望を覚えている。

 また、「集団自決」が日本軍(皇軍)の統制下で日本軍の強い関与を受けていたものであったことは、2007年12月の段階で文科省、検定審議会も認識しているとされているにもかかわらず、そうした当時の状況を明確に読みとれる記述の教科書が少数で、しかもそれらが検定前申請本(白表紙本)段階からの記述であることは残念というほかない。執筆者たちにさらなる改善の努力を求めたい。

 とりわけ、「集団自決」を「米軍の猛攻で逃げ場を失い」あるいは「米軍が上陸する中で、追いつめられた住民が」などとの理由づけをしている育鵬社と自由社の記述は、日本軍の責任をすべて米軍に転嫁した明白な歴史歪曲であり、とうてい看過できない。

こうした歪曲記述をした執筆者だけでなくこれらの記述を検定で是正させなかった検定官と審議会委員の責任は重い。この点については、至急に是正措置を講じるよう求める。

3.さらに、前出の育鵬社と自由社の沖縄戦記述には重大な看過しがたい過誤が複数存在 している。

(1)まず育鵬社版の「読み物コラム・昭和20年、戦局の悪化と終戦」では「沖縄戦、ひめゆり学徒隊の看護活動」と題した文章を掲載し、そこでは「ひめゆり学徒隊」の名称が当時から使用されていたものであるかのように扱われている。この女子学徒隊の名称表記をめぐっては、同学徒隊の生存者たちからの問題提起などを受けて、長い間の議論と名称の変遷を経て、現在の「ひめゆり学徒隊」表記に至った経過がある。そうした経過を持つ最近の呼称を当時からのものであるかのように認識させるこの記述は明らかに誤りである。

  こうした沖縄戦をめぐる学術研究等の成果に対する認識や配慮が欠けている同書執筆者たちの責任は当然とし、さらにこうした不適格な記述をそのまま容認した検定官たちの責任も重い。

 (2)さらに沖縄戦において戦場に動員された女子学徒隊はこの「ひめゆり学徒隊」だけでないことが、今や沖縄戦認識においては常識中の常識とされている。この育鵬社版教科書は、こうした基本的認識をないがしろにしており、それは他の女子学徒隊の隊員、とりわけ死亡した女子学徒の存在を無視したことをもって、遺族など関係者に新たな苦痛の念を与えるものである。

  執筆者たちが関係者に謝罪し、至急に記述を是正することを我々は求める。もちろんこのままの記述で全国の中学生が沖縄戦を学習することは、とうてい容認できない。

 (3)次に自由社版では「コラム・戦時国際法と戦争犯罪」と題した二頁開きの冒頭部分で、「戦時国際法の考え方」とする文章を揚げ「戦争の惨禍を少しでも減らすため、非戦闘員の殺傷などを禁じた戦時国際法のルール」が定められたと詳しく説明をしている。ただし、「これらのルールはしばしば破られました」と続け、さらに「戦争で非武装の人々に対する殺害や虐待を一切しなかった国もありませんでした。日本軍も」同様でした云々とある。

   この文章は一読すると、日本軍による不当な殺害や虐待の事実に触れるという公正さを装いながら、そうしたことが戦争中にはどこの国の軍隊でもあったことだとして、日本軍の責任をうやむやにする文脈となっている。確かに流れ弾や誤爆などによる死亡はどこの戦争でもあり得る。しかし日本軍が実行した各地での軍の命令による組織的な住民虐殺等は、すべての戦争に当てはまるものではない。

まして、沖縄戦の場合は、日本軍が日本国民である沖縄県民や朝鮮半島出身者などを虐殺したり「集団自決」を強制したのであるから、この一般論には当てはまらない。このように、この記述部分は巧妙に構成された文脈で、日本軍の沖縄での蛮行の免責を図るという二重の歴史歪曲を仕組んでいるものである。

しかも、それだけではなく、このコラムではこうした小細工に類した記述の直後に「沖縄戦の悲劇」とする文章を続け、その中で前出のように「米軍が上陸する中で、追いつめられた住民が、家族ぐるみで集団自決する悲劇が起こりました」と米軍に責任転嫁する記述を明示している。

この部分を加え、三重のごまかし記述をもって、日本軍の住民虐殺や「集団自決」の責任をなかったことにしようとする同書の歪曲記述は、極めて悪質と言わざるをえない。

以上の検定結果に基づき、我々は次のように求める。

1.上記の各問題点は2007年の「集団自決」歪曲検定事件以後くり返し指摘された検定官及び審議会委員の沖縄戦認識の未熟さが今回も改善されていないことに由来していると判断される。よって、我々は検定官および審議会委員に沖縄史及び沖縄戦史に詳しい者を加えることと、検定基準に「近隣諸国条項」と並ぶ「沖縄条項」の策定を求める。

2.今回の検定に合格したすべての中学校歴史教科書の執筆者等には、生徒用供給本の印 刷着手までの今後約6ヶ月間に、さらなる記述改善に向けたとりくみを求める。

3.とりわけ育鵬社版及び自由社版の明らかな歴史歪曲、誤解される不正記述については、早急に是正されることを求め、女子学徒隊関係者など精神的苦痛を与えた人々にたいしての謝罪も強く求める。

4.上記両社教科書の明白な歪曲記述等が是正されるように県内外の地方自治体議会や各種市民団体などが、我々と同様の見解、要求、抗議等を決議し、表明することで、検定に合格したままの両教科書が全国の中学校で使用されることのないように、世論形成を図られることを希望する。

 最後に、我々は今年度だけでなく来年度以降の日本史等の高校教科書の記述についてもその改善に向けて根気強く取り組みを続ける決意であることをここに改めて表明する。

以上

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