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教科書採択不正問題の情報公開(大阪府)

教科書採択不正問題の情報公開(大阪府)
松 岡  勲(学校労働者ネットワーク・高槻)

はじめに

 先に高槻市に教科書採択不正問題の情報公開をしましたが、続いて大阪府に同様の公開請求をしました。高槻市と比較して大阪府の情報開示結果がどうなるか興味深いところでした。公開請求した内容は次の通りです。
1)文部科学省の教科書採択に係る調査通知文及び関連文書一式、上記に関する府の報告文書及び関連文書一式
2)教科書採択の不正問題の処分及び行政措置に係る文書及び関連文書一式(府立学校及び府下市町村立学校関係) 
 その開示文書を昨年12月に入手しました。大阪府の場合も高槻市同様に部分公開決定で、個人情報保護を理由(大阪府情報公開条例第9号第1号)に採択不正のあった教員及び懲戒処分・行政措置のあった教員の氏名、それが特定できる所属学校名、事件発生及び経過に係る月日、現職位、採択に関与する具体的立場に関する事項は非公開でした。ただおもしろいことに、不正のあった教科書会社名が公開されたことです。(高槻市の場合は非公開)。これで教科書会社が不正に使った金の動きが手に取るようによく分かります。以下に開示結果を報告します。

文部科学省調査に対する大阪府教育委員会の報告

 教科書採択に関する不正問題については、文部科学省が教科書会社に不正の自己申告を求め、教科書会社の回答に基づいて文科省が都道府県教育委員会に調査を求めたものでした。さらに大阪府教委は府下市町村教育委員会に調査を下ろし、その結果を集約して文科省に回答しました。(対象の調査期間は2009年度から前回の中学校教科書採択の2014年度まで、大阪府教委の市町村市教委への調査依頼は2016年1月29日付け。)なお、文科省への報告は政令指定都市の大阪市、堺市も含まれています。
 大阪府教育委員会が公開した「教科書発行者による自己点検・検証結果の報告」を見ていきます。これは調査の対象者となった延べ482名の教職員の教科書採択時の不適正行為について一覧にしたもので、非常に興味深い結果でした。大阪府教委の調査の集約票(2016年3月18日)によると、調査対象者440人(教科書会社の間違い等が減算された数字)で、採択に関与する立場にあった者が130人、金品の受領等があった者が267人、飲食の提供のあった者が94人、交通費・宿泊費の受取があった者が56人という結果でした。教科書会社は採択に関与できる立場にある者(具体的には調査員と選定委員)を狙ったひどい結果と言えます。
 今回の開示で教科書会社名が公開されましたので、「教科書発行者による自己点検・検証結果の報告」から金品受領の事例を具体的に見てみます。教員に申請本を見せて、意見を聞く形で謝礼を支払った教科書会社は4社ありました。(金品受領者の内、返還した者を含む)。
  東京書籍  1万円×218人=218万円、1万3千円×1人=1万3千円
        2万円×5人=10万円、5千円×4人=2万円
        3千円×4人=1万2千円、5百円×1人=5百円
        合計で232万5千5百円。これはまさに贈収賄です。
  光村図書  1万円×1人=1万円、2万円×11人=22万円
        2万5千円×8人=20万円 合計で43万円。
  数研出版  2万円×7人で14万円。
  大日本図書 5千円と1万円で1万5千円。

  飲食の提供についても教科書会社が主催した「編集会議」等に参加後、教科書会社社員も同席した懇親会において飲食の提供を受けた悪質な者、さらに宿泊費や交通費(新幹線代等)を教科書会社が負担する例が多く見られます。教科書会社及び教員のこのような教科書採択の不正は許せません。
 また民族主義・排外主義的内容の教科書を発行する育鵬社の申請本を閲覧した地域も分かりました。大阪市、貝塚市、泉佐野市(閲覧をしていないが、育鵬社社員と会っている。採択に関与できる立場の者もあり)がそれです。
 この中で目を引くのは申請本を教育長が閲覧しているケースです。2014年度検定で育鵬社の申請本が2件閲覧されていました。(市町村名は非公開)。関連して数研出版の申請本が教育長によってのべ16件閲覧されていました。(これも市町村名は非公開)。前記の育鵬社の場合を入れると18件になります。
 教育長は市町村で一人であるから個人が特定されるという理由で市町村名が非開示とされたことはおかしいと思います。教育長は教科書採択の権限を持つ教育委員会の責任者であり、また教科書採択不正者への処分は教育長の責任でなされます。その教育長が採択に関して禁止されている申請本を閲覧したという違反を犯しています。教育行政の責任者が個人情報の保護を理由にして守られるのはおかしいです。その市町村名の公開がなされるべきと考えます。

最初の懲戒処分(2015・12・18) 

 教科書採択の不正問題での最初の処分は、新聞を賑わした三省堂の英語教科書に関するものでした。(高槻市、減給10分の1、2015年12月18日)この件は先に報告した高槻市の情報公開でも開示されました。なお、高槻市では教科書会社名は非公開でしたが、大阪府の場合は公開でした。これで三省堂(英語)の申請本であることが分かりました。一方大阪府は不正のあった月日が非公開でした。双方あわせて全部が明らかになります。なおこの教員は東京書籍からも金品を受領しているので二股膏薬です。さらに大阪府教委はこの教員が校長であったことを開示しています。

<処分説明書>【例示】
 あなたは、平成26年8月23日(土)、株式会社三省堂が東京ドームホテルにおいて開催した英語教科書の「編集会議」に出席し、高槻市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、当該編集会議への出席に係る報酬として、同社から現金5万円を受け取った。
 また、あなたは、当該編集会議終了後、同ホテル内において行われた同社の社員も参加した懇親会に出席し、さらに同日は同ホテルに宿泊し、懇親費と宿泊費は同社が負担した。 加えて、あなたは、平成22年9月4日(土)、愛知県名古屋市で行われた東京書籍株式会社の「中学英語編集ブロック会議」に出席し、この時も、高槻市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、報酬を受け取っていた。(以下、中略)   あなたのこれらの行為は、法令を遵守しなければならない教育公務員としてのみならず、所属職員を監督する立場にある公立学校長として、その自覚が欠如していると言わざるを得ず、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり、その職の信用を失墜するものである。
 よって、地方公務員法第29条第1項第1号及び第3号に該当するものとして、1月間給料及びこれに対する地域手当の合計額の10分の1を減ずる。・・・・高槻市教委

2回目の懲戒処分及び行政措置(2016・3・28)

 続いて2016年3月28日に2回目の処分がなされています。懲戒処分2名、行政措置(服務上の措置)8名、校長による注意4名でした。それを順に見ていきます。なお採択に関与した者が調査員か選定委員かは非公開でしたが、墨塗の3文字は調査員、4文字は選定委員と読み取れます。懲戒処分とは停職・減給・戒告等、行政措置(服務上の措置)とは訓戒・訓告・厳重注意等を言う。(大阪市、堺市は政令都市のため含まれていません)。

<懲戒処分>
  寝屋川市 戒告1名 現金2万5千円、採択に関与(調査員)、校長
  大東市  戒告1名 現金2万5千円、ホテル費用受取、採択関与(調査員)、校長<行政措置>
  高槻市  訓戒1名 現金1万円、校長
 茨木市  訓戒1名 現金1万円、校長
       訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
  吹田市  訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
  交野市  訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
  東大阪市 訓告1名 現金2万円
  八尾市  厳重注意1名 現金1万円
  羽曳野市 厳重注意1名 現金1万円       *(  )は非開示のため推定

<処分説明書>【例示】
(戒告)あなたは、平成21年●月●●日、光村図書株式会社が東京都内で開催した会議「教育ホーラム」に出席し、寝屋川市教育委員会の許可を受けていなかったにもかわらず、当該会議への出席に係る報酬等として、同社から2万5千円を受け取った。
 また、あなたは、当該会議において、同社が文部科学省の教科用図書検定審議会に提出している申請図書等の内容を知らされ、その後、平成23年度寝屋川市立小学校教科書採択において、調査員に任命され採択に関与した。(以下、中略)
 あなたのこれらの行為は、法令を遵守しなければならない教育公務員としてのみならず、当時、所属職員を監督する立場にある公立学校長であった者として、その自覚が欠如していると言わざるを得ず、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり、その職の信用を失墜するものである。(以下、後略)・・・・寝屋川市教委

(訓戒)あなたは、平成21年●月●●日、東京書籍株式会社が大阪市内で開催した会議に出席し、当該会議において、同社が文部科学省の教科用図書検定審議会に提出している申請図書等の内容を知らされ、また茨木市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、当該会議への出席に係る報酬等として、同社から1万円を受け取った。(以下、中略)
 あなたのこれらの行為は、法令を遵守しなければならない教育校務員としてのみならず、当時、所属職員を監督する立場にある公立学校長であった者として、その自覚が欠如していると言わざるを得ず、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり、その職の信用を失墜するものである。(以下、後略)・・・・茨木市教委

(訓告)あなたは、平成22年●月●●日、東京書籍株式会社が大阪市内で開催した会議に出席し、吹田市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、当該会議への出席に係る報酬としてとして、同社から1万円を受け取った。(以下、中略)
 また、また、あなたは、当該会議において、同社が文部科学省教科用図書検定審議会に提出している申請図書等の内容を知らされ、その後、平成24年度吹田市立小学校教科書採択において、調査員に任命され採択に関与した。(以下、略)・・・・吹田市教委

3回目の懲戒処分及び行政措置(2016・5・18)

 続いて3度目の懲戒処分及び行政措置が2016年5月18日にありました、これは前記文科省調査後の大量の処分です。懲戒処分3名、行政措置80名、所属長注意が39名でした。以下にその一覧を上げます。

<懲戒処分>
  寝屋川市 戒告1名 現金2万5千円、採択に関与(選定委員)、校長
  枚方市  戒告1名 現金1万円、採択に関与(調査委員)、校長
  和泉市  戒告1名 現金2万円
<行政措置>
  茨木市  訓戒2名 現金1万円、採択に関与(調査員)          現金1万円+図書カード3千円、採択に関与(調査員)
       訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
厳重注意1名 現金1万円
  高槻市  訓告1名 現金1万円
       厳重注意10名 現金2万5千円1名、1万円7名、図書カード2名  吹田市  訓戒2名 現金2万円、採択に関与(調査員)
            現金2万円、採択に関与(調査員)
       訓告2名 現金1万円、採択に関与(調査員)
            現金1万円、採択に関与(調査員)
       厳重注意9名 現金1万円9名
  摂津市  訓告1名 2万5千円、採択に関与(調査員)
  交野市  訓戒1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
       訓告1名 現金1万円
       厳重注意1名 現金1万円
  四條畷市 訓告1名 現金2万円
       厳重注意1名 現金1万円
  寝屋川市 厳重注意2名 現金1万円2名
  枚方市  訓告3名 現金3万円1名、2万円2名
       厳重注意1名 現金1万円
  門真市  訓戒2名 現金2万円、採択に関与(調査員)
            現金2万円、採択に関与(調査員)                   訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
  八尾市  厳重注意1名 現金1万円
  柏原市 訓戒1名 現金2万円、採択に関与(調査員)
  羽曳野市 訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
  河内長野市 訓戒1名 現金3万5千、採択に関与(調査員)
  富田林市 厳重注意1名 現金2万5千円
  和泉市  訓戒2名 現金2万5千円 校長
            現金2万円、採択に関与(調査員)
       訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
       厳重注意1名 現金1万円
  高石市  厳重注意1名 現金2万5千円
  貝塚市  訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
       厳重注意1名 現金1万円
  熊取町  訓告1名 現金1万円、採択に関与(調査員)
       厳重注意1名 現金1万円
  泉南市  訓戒1名 現金2万円、採択に関与(調査員)
  泉佐野市 厳重注意1名 現金1万円
  岸和田市 訓告3名 現金1万円、採択に関与(調査員)
            現金1万円、採択に関与(調査員)
            現金1万円、採択に関与(調査員)
       厳重注意7名 現金1万円7名
  東大阪市 訓戒3名 現金2万5千円、宿泊費受取
            現金2万円、採択に関与(調査員)
            現金2万円、採択に関与(調査員)
訓告1名 現金2万円
       厳重注意5名 現金2万5千円2名、1万円3名
  大阪府教育庁 厳重注意1名 現金1万(元は羽曳野市教員)
  枚方市教委  厳重注意1名 現金1万円(元枚方市教員)
  *(  )は非開示のため推定

大阪府立高校の処分(20016・5・18)

 大阪府立高校では2016年5月18日に処分がありました。これは府議会で議員から教科書採択不適切行為問題の質問があり、大阪府立高校独自の調査が行われ、教科書採択不適切行為に対する処分でした。採択に関する不正は24名あり、その内訳は、訓告5名、厳重注意19名でした。

<行政措置> 訓告5名 現金5万円1名、2万4千円1名、2万円2名、9千円1名        厳重注意19名 現金1万円13名、1万5千円1名、5千円2名
              図書カード3千円2名、5千円から1万円1名
 大阪府教委による府立学校教員に対する処分は、懲戒処分はなく、全て行政措置です。和泉市は現金2万円で戒告なのに、府では5万円でも訓告など、市町村教委の処分と比べ軽い印象を受けます。

<訓告>【例示】
 あなたは平成21年●月●日、平成22年●月●日、平成23年●月●日、平成24年●月●日及び平成25年●月●日、東京書籍株式会社が大阪市内で開催した会議に出席し、当該会議において、編集中の教科用図書に対する意見を述べ、(中略)当該会議への出席に係る報酬等として、各回、同社から現金1万円を受け取った。
 あなたが、任命権者の許可を得ず、複数の会議に出席して報酬をうけたことは、地方公務員法第38条第1項に違反する行為である。(以下、略)

<厳重注意>【例示】
 あなたは平成23年●月●日、株式会社新興出版社啓林館が大阪市内で開催した編集中の教科用図書「ELEMENT English CommunicationⅡ」に係る会議に出席し、当該会議において、編集中の教科用図書に対する意見を述べ、(中略)当該会議への出席に係る報酬等として、同社から現金1万5千円を受け取った。
 あなたが、任命権者の許可を得ず、複数の会議に出席して報酬をうけたことは、地方公務員法第38条第1項に違反する行為である。(以下、略)

その他

 その他に府立高校では教科書会社より指導書の無償提供を受けていたことが発覚しました。その調査が行われ、文科省に調査結果の報告がなされた上、所属長より注意がされ、校長には厳重注意の行政措置がなされました。
 またお中元・お歳暮を教書会社から受け取っている教員がいて(大阪市立中学校、八尾私立中学校)、その調査結果が文科省へ報告され、所属長注意がなされています。

おわりに

 教科書不正採択問題について二度にわたって情報公開に取り組んだ結果、これまで公表されず見えていなかった情報が明るみに出ました。みなさんも関係する市町村で情報公開に取り組まれることをおすすめします。きっと見えなかった教科書採択の実態が明らかになると思います。また今回非開示とされた申請本を閲覧した教育長の所属する市町村名の開示(異議申し立て)を求めて行く予定です。今後とも教科書採択の情報交換をお願いします。
(2017・1・10)
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