「慰安婦」に関する補助教材使用に対する抗議行動報告

 2017年6月12日、子どもたちに渡すな!危ない教科書 大阪の会と日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークは大阪府教育庁(以下、大阪府教委)に対して、日本軍「慰安婦」問題に関する補助教材の配布について抗議行動を行いました。

1、補助教材のこれまでの経過と抗議内容

大阪府教委は、朝日新聞が吉田証言の記事を取り消したことを契機に、2015年10月、「『慰安婦』に関する補助教材」を作成し、「慰安婦」のことを授業で教える際にはこの教材を必ず使用することとしていました。
 その補助教材の内容は、朝日新聞の吉田証言の記事取り消しについての経過と、「慰安婦問題に対する日本政府の考え」(外務省HP)、そして参考資料として河野談話や、強制連行はなかったとする第一次安倍政権の閣議決定、そして安倍談話等で構成されています。日本軍「慰安婦」問題の被害実態に触れることなく、強制連行はなかったかのような印象を植え付け、政府の公式見解を一方的に押し付ける、きわめて悪質な教材です。
 そして補助教材を作成した当初は、授業で「慰安婦」のことを取り上げてときに必ず使用するとしていました。しかし4月24日の通知で府教委は、授業を行うか否かにかかわりなく「速やかに配付」することを命じたのです。この教材を用いること自体が問題であるのに、授業実践とは何のかかわりもなく一方的に配付せよとは、日本軍「慰安婦」問題への生徒の理解を一層混乱させる行為で、許すことはできません。
 この日、私たちは抗議文を手渡し、
1、一方的に配付を命ずる今通知を撤回すること
2、政府の公式見解ばかりでなく、被害者の証言や国連の勧告党もかならず教材として使用すること
の2点を要求しました。同時にあらかじめ渡していた10項目の質問に答えてもらいました。
対応したのは教育振興室高等学校課主席指導主事の植木さんと主任指導主事の香月さんです。

 府教委からは、私たちの2点の要求に対しては拒否し、そして質問に対してもほぼゼロ回答でした。
 以下は、今回の交渉での特徴的なやり取りです。最大の争点は、後段で記載します。

①今回、「速やかに配付」することとしたことについて
教科書を配付した以上、生徒の「慰安婦」問題に対するより深い理解のために、速やかに配付することとした。ただし授業実践時に使用するというのであれば、その時に配付でも構わない。授業実践を行わない生徒に対しても配付が必要である。
授業で必ず「慰安婦」を教えなければならないというのではない。教委としてそれは指導しない。教育実践を行うか否かは教育現場の判断である。

②教材が日本軍「慰安婦」問題への理解を妨げるのではないか?
 こちらがいくら具体的な話をしても理解されることなく平行線に終わる。府教委としては生徒の理解を深めるために今教材を作成することは職務権限上必要なことだというが、このような教材を作成したのはこれだけと認め、日本軍「慰安婦」問題に対する府教委の対応の異様さがあらわになった。

③議会からの圧力があったのではないか?
   西田議員(維新)、上島議員(維新)が議会で取り上げたことを認めるが、教材作成は府教委の判断と主張。しかし後述するやり取りの矛盾から、原因は議会の圧力であると明らかである。

2、吉田証言をとりあげる根拠は崩れた
 
今回の交渉の最大のポイントは、なぜいま吉田証言を取り上げるのかということにありました。
 吉田証言が教科書の記述に影響を与えたという事実はありませんし、当然教科書に吉田証言など載っていません。吉田証言は歴史専門家の中では早くから「資料としては使えない」という見方が定着しており、日本軍「慰安婦」問題の学術的な研究は、その後、金学順さんをはじめたくさんの被害女性が名乗り出られたということと、日本軍の主体的な関与を示す史料が発見されることにより、「日本軍『慰安婦』問題は性奴隷制度である」という結果が学術的にも国際的にも定着しています。吉田証言が嘘だからといって、そこには何の影響も与えていません。
 吉田証言が教科書の記載内容に影響を与えていないということは、府教委も認めるところです。
 府教委がこの補助教材を使用しなければならない理由は、「検定基準が変わったから」というものでした。文科省は2014年1月17日、教科書で近現代史を扱う際に政府見解を明記するよう検定基準を改悪しました。現在使用されている教科書はその検定基準で検定を受けていません。だから補助教材が必要というのが、府教委の主張です。
 しかしこれはおかしな主張です。なぜならば新しい基準で検定を受けた教科書も、吉田証言など書かれていないからです。それどころか、第一次安倍政権の閣議決定も、安倍談話も、記載されていません。検定基準の変更が補助教材を用いる理由にはならないのです。
 今年度は高校の教科書検定が行われ、来年度からは新基準で検定を受けた教科書が使用されます。そして来年度以降はこの補助教材は使用しないと府教委は明言しました。もちろん来年度以降の教科書に吉田証言など記載されていません。では、なぜいまこの補助教材を使用する必要があるのか?!
 府教委は現在使用されている教科書に、間違いがあるとは言いません。では何が不足しているから補助教材を使用するのかと具体的に問うても、なにも回答は得られませんでした。
 府教委の論理は破たんしています。結局は「府議会議員の言われるとおりにした」ということでしかありません。

3、教育に対する責任を放棄した府教委を許さない

 このような補助教材を一方的に配布することにより生徒が混乱するだろうことは、だれの目にも明らかです。またこの教材で授業実践をすることが、教員にとってどれほど困難であるかも。しかし府教委は、生徒は混乱しないというし、教員も授業実践できると断言します。
 そして、補助教材を配付する以上かならず授業実践を行えと私たちは主張しましたが、教育実践を行うか否かはあくまでも教育現場が判断することとして府教委はこれを拒否しました。
 これほど無責任な態度はありません。府教委は教育に対する責任を放棄しています。
 私たちは日本軍「慰安婦」問題を教えるのであれば被害証言が必須であり、被害の事実をしっかり教えろと主張しましたが、府教委は自らの責任においてそれを行う意思はなく、あまりにも不誠実な態度に終始しました。
 このような府教委の姿勢を許すわけにはいきません。

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大阪府教委「副教材」を補完するために作成した教材

日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークと子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会は、1月22日、大阪府立高校あてに、以下のお手紙と、私たちが作成した「副教材」を送付しました。

 この「副教材」は、被害事実を一切記載することなく、政府見解を掲載する事に終始した大阪府教委の副教材を補完するために作成したものです。内容も必要最小限に留め、A4サイズ4枚にまとめました。
 批判に堪えられるよう、主観を避け、誰にも否定できない事実のみを掲載するよう努めました。
 みなさまもぜひご利用下さい。

(副教材ダウンロード)
http://www.ianfu-kansai-net.org/kyozai.pdf

『慰安婦』補助教材への公開質問状に対する府教委の回答

10月28日の教育委員会会議で「『慰安婦』に関する補助教材について」が示されました。
11月10日、私たちは、日本軍「慰安婦」問題の被害の実態を一切示さないまま、政府の見解を一方的に押しつける補助教材に抗議すると共に日本軍「慰安婦」問題の被害を具体的に教えるべきだとする「抗議文および公開質問状」を提出しました。

12月1日には、私たちと大阪府教委との間で話し合いを持ち、12月9日にはそれを踏まえた文書回答もありました。
しかし、この文書回答は、私たちの要望・質問には一切答えていません。このような回答では到底納得出来ません。

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平成27 年12 月9日
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会 様

高等学校課長

「慰安婦」に関する補助教材に係る公開質問状に対する回答について

(質問)
1 補助教材として日本軍「慰安婦」被害者の証言、少なくとも日本の裁判所にて認定された被害事実を掲載するべきと考えます。[資料①]これに対する貴職の考えを教えてください。

2 日本政府の主張ばかりを載せるのではなく、国連の勧告、アメリカ・EU議会の決議等、国際社会から日本政府に対して要求されている声を掲載するべきと考えます。[資料②]これに対する貴職の考えを教えてください。

【質問1,2に対する回答】
本補助教材の作成にあたっては、平成26 年1月に改正された国の高等学校教科用図書検定基準や、平成27 年3月4日付の「学校における補助教材の適正な取扱いについて(通知)」の内容を踏まえました。新しい国の検定基準では、「政府の統一的な見解や最高裁の判例がある場合には、それに基づいた記述をする」旨が示されていることから、この補助教材についても、政府見解等を活用することとしました。

(質問)
3 大阪府教育委員会として、日本軍「慰安婦」被害者の強制連行はなかったと考えているのでしょうか。なかったと考えているのであれば、[資料①]も参考にした上で、その根拠を教えてください。あったと考えているのであれば、なぜその事実を教材に掲載しないのか教えてください。

【質問3に対する回答】
府教育委員会は、生徒に客観的かつ公正な資料に基づいて歴史の事実に関する理解を進めることが大切であると考えています。また、指導に当たっては、多面的・多角的に考察し、公正に判断する能力をはぐくむため、史実の認識や評価に慎重を期する必要があります。それゆえに、補助教材には、朝日新聞の記事取り消しという明白な事実と、種々の政府見解を取り上げることにしました。

(質問)
4 吉田証言が否定されたことを今、副教材として取り上げるのは、吉田証言が教育現場で教えられていると判断されたからでしょうか。そうであれば、吉田証言を教育現場で教えている事実を調査しましたか?そうでなければ、教育現場で教えられていない吉田証言を副教材に掲載する意図を教えてください。

【質問4に対する回答】
吉田証言について教育現場で教えている事実があるかどうか調査していませんが、取り消された記事の内容に依拠した資料や情報を活用した指導が行われている場合は訂正する必要があるため、今年2月に府教育委員会は、「取り消された記事の内容に依拠した資料や情報を活用した指導が行われている場合は訂正するよう」府立学校校長・准校長あて通知をしました。今回は、その通知文に引き続いて、生徒が慰安婦問題についての理解を深めることができるよう、補助教材を作成したものです。

(質問)
5 この教材を作成するに当たり、学識経験者の意見を求めましたか。もし学識経験者の意見を求めたのであれば、それが誰なのか教えてください。もし意見を求めなかったのであれば、それはなぜなのか教えてください。

【質問5に対する回答】
本教材の作成に当たり、学識経験者の意見は求めていません。
質問3に対する回答のとおり、府教育委員会は、生徒に客観的かつ公正な資料に基づいて歴史の事実に関する理解を進めることが大切であると考えています。また、指導に当たっては、多面的・多角的に考察し、公正に判断する能力をはぐくむため、史実の認識や評価に慎重を期する必要があります。それゆえに、補助教材には、朝日新聞の記事取り消しという明白な事実と、種々の政府見解を取り上げることにしました。

2015年12月1日 「慰安婦」教材に関する大阪府教委交渉報告

日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワークの方から報告が入りましたので紹介します。

2015年12月1日 「慰安婦」教材に関する大阪府教委交渉報告
大阪府教委は日本軍「慰安婦」被害者の被害事実を教えろ!

 2015年12月1日、「子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会」と「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」とによる、「慰安婦」補助教材に関する大阪府教育委員会との交渉が行われました。府教委からは2名が対応、こちらからは両団体の他、「日の丸・君が代」不起立処分に反対する教職員・市民など約20人が参加しました。
 まず府教委側より、補助教材に至る経過説明がありました。
 朝日新聞の「吉田証言取り消し」を受けて、2014年の9月議会で維新の会の西田議員より「吉田証言が虚偽だったので、教科書の記述根拠がなくなった」と学校現場での教育の是正を求める質問をし、松井知事が「誤報を認めた限り強制の証拠がなくなった。間違った教科書で知識を得るのはマイナスなので、補完するための教材を配布する」と答えたことが、今回の発端です。
 これに対して府教委として対応策を協議し、補助教材を配布するのではなく、2月20付で通知「学校における適正な指導及び教材の適正な取扱について」を出し、学校現場で吉田証言に依拠するような授業をしているような場合には是正するよう通知を出しました。
 するとまたしても2月議会でこのことが取り上げられ、知事は「補助教材はしっかり出すようにする、総理談話も注視しながら」と答弁しました。そして府教委は安倍談話の発出を待ち、今回の教材作成に至ったわけです。


1,なぜ政府の見解しか教えないのか?

 なぜこの補助教材には政府の見解しか載せていないのか? 私たちがこのことを追求すると、府教委は以下のように答えました。
 2014年1月に改正された教科書検定基準では、「政府の統一的な見解や最高裁の判例がある場合には、それに基づいた記述をする」とある。そして編集に当たって、「客観的かつ公正な資料に基づいて、歴史の事実に関する理解を深めることが大切」であり、指導に当たって「多面的・多角的に考察し、公正に判断する能力を育むため史実の認識や評価に慎重を期する必要がある」ために、朝日新聞の「吉田証言の取り消し」という明白な事実と、種々の政府見解を取り上げることにした、と。
 私たちから見れば、この説明にはかなり無理があります。府教委は「多面的・多角的」と言いますが、今回の補助教材は国の見解を羅列しただけの一方的な教材にしか見えません。
 そして教材を普通に読めば、「慰安婦」問題はなかったとしか判断できません。朝日新聞の「吉田証言取り消し」があって、第1次安倍内閣の「強制連行の証拠はなかった閣議決定」があって……、しかしそういう指摘にしたいして、府教委は「でも河野談話も載せています」「安倍政権は河野談話を否定していない」と反論します。そして政府見解の中にも様々な見解があり、それが「多面的・多角的」であると主張するのです。最初は何を言っているのか分かりにくかったのですが、政府見解の変遷、つまり安倍政権が日本軍「慰安婦」問題を否定しようと企てたにもかかわらず、それをなしえず未だ河野談話を継承せざるを得ないことを学ぶことで、「多面的・多角的」な学習ができると考えているようなのです。

 しかし政府見解の羅列だけで高校生がそれを読み取るのは、相当に難しいと判断せざるをえません。そしてもし読み取る能力があったとしても「安倍政権はブレているな」と感じる程度で、その根本の問題、つまり日本軍「慰安婦」問題とはなんであるのかを学ぶことは、この教材からは不可能です。これは「『慰安婦』に関する日本政府の見解の変遷に関する補助教材」であったとしても、表題通りの「『慰安婦』に関する補助教材」ではありえません。

2,日本軍「慰安婦」被害者の被害体験を補助教材に記述せよ!

 日本軍「慰安婦」問題を学ぶための教材であるならば、被害者の証言――「慰安婦」にさせられた女性がどのような辛い体験をしたのかという被害事実を載せなければ、意味がありません。補助教材には被害者の証言を載せるべきだと私たちは強く主張し、そしてこのことが交渉の最大の焦点となりました。
 私たちは「証言こそが日本軍『慰安婦』問題を学ぶための必要不可欠な教材である」と主張し、「それは認めますよね」と追求すると、「証言は有効な教材である」と認めました。また現場教員が補助教材に追加して証言などを用いて授業を行うことも、否定しませんでした。
 しかし、補助教材に被害事実を追加記載すること、あるいは被害事実を含めた追加教材を作成することについては否定し、認めようとしませんでした。その可能性を検討することさえ否定しました。「それはなぜですか?」「断る理由はないでしょう」といくら問うても、何も答えようとしません。
 その材料、維新の会も否定しようのない被害事実を、こちらで用意しますよと提案しているにもかかわらず。

 被害事実を教えずに、本当に「多面的・多角的」で「客観的かつ公正」な学習が可能なのでしょうか? 府教委はそれが可能と言い張ります。なので私たちは問いました。
 「政府答弁はすべて真実なのか?」
 「真実ですよね」
 しかし現実には、11月10付の「抗議文および公開質問状」にも資料として添付しましたが、安倍政権の見解は国際的な批判を浴びています。2014年の国連自由権規約委員会の最終所見では「委員会は、締約国(日本)が、慰安所のこれらの女性たちの『募集、移送及び管理』は、軍又は軍のために行動した者たちにより、脅迫や強圧によって総じて本人たちの意に反して行われた事例が数多くあったとしているにもかかわらず、『慰安婦』は戦時中日本軍によって『強制的に連行』されたのではなかったとする締約国の矛盾する立場を懸念する」と、明確に批判されています。
 「多面的・多角的」とは、日本政府の主張と国際世論の対立の双方を学んで初めて学ぶことができるのであって、日本政府の見解を追いかけているだけでは絶対に学ぶことはできません。
 また安倍政権は現在、日本軍「慰安婦」問題の強制連行があったと認めようとはしませんが、「政府見解が絶対的に正しいのならば、強制連行はなかったと判断しているのか?」と問いました。
 その返答は、「強制連行があったかなかったかは事実として明確になっていない」です。
 大阪府教委は誤った理解をしています。強制連行があったことは、明確な事実です。これも府教委には事前に資料を渡していたのですが、中国人「慰安婦」裁判、あるいはオランダ人「慰安婦」裁判で、どう見ても強制連行としか判断できない被害が、裁判所で事実認定されています。
 いみじくも府教委の浅い理解が示したように、政府見解だけでは「多面的・多角的」で「客観的かつ公正」な理解など、できるはずがないのです。
 だから、まず、被害事実から学ぶことが必要なのです。証言が必要なのです。

 なぜ、補助教材に被害事実を追加記載すること、あるいは被害事実を含めた追加教材を作成することを、府教委は受け入れないのでしょうか?

3,吉田証言はなんの影響も与えていないのに?!

 松井知事が補助教材の作成を答弁した9月議会の後、府教委は対応を検討した結果、補助教材の作成ではなく、教育現場に「吉田証言を根拠に授業しないように」という指示で終わらせようとしました。しかし2月議会でまたしても蒸し返され、今回のような補助教材が作られる結果となりました。
 驚かされたのは、吉田証言が現在の教科書の記述に何らかの影響をあたえるものではないということを、府教委も交渉の最初から認め、しかも松井知事が補助教材を口にした当初から府教委は「教科書の記述を返るものではない」と認識していたということでした。
 吉田証言は1993年~1994年には「史料として使えない」と判断されており、現在の歴史学に何の影響も与えていません。それは学問の世界では常識であり、朝日新聞が吉田証言を取り消したからといって、高校の歴史教科書の記述に全く影響を与えるものでないことは、当然です。しかし、そういう正しい認識をしておきながらこのような教材と作るということであれば、重大さは全く異なります。
 教科書の記述に影響を与えないのであれば、なぜ今、朝日新聞の「吉田証言取り消し」を補助教材で教える必要があるのでしょうか? これは「多面的・多角的」とか言えるレベルではなく、高校生たちにとっては無用の混乱です。学校現場で最初から教えられていないものを、しかも日本軍「慰安婦」被害者の被害実態を教えられることなく、「吉田証言取り消し」を持ち込むのですから。こんなものはもはや歴史の教育ではありません。

 私たちは質問状で、「吉田証言を教育現場で教えている事実を調査しましたか?」と質問していましたが、回答は「調査はしていない」ということでした。調査することを思いつきもしなかったようです。
 維新の西田議員が「吉田証言が虚偽だったので、教科書の記述根拠がなくなった」と吠えたとき、もし府教委に抵抗する気があれば、「現場で吉田証言を根拠とする授業はなされていない」ということを確認するはずです。だって、現場で吉田証言に基づく授業なんてなされているわけがありません。済州島で日本軍「慰安婦」の強制連行があったなんて、誰が教えるでしょうか? それでなくとも、被害者がこれだけ名乗り出ているというのに、吉田証言を取り上げる意味がありません。授業で使われていないのであれば、このような教材を作成する理由もなくなります。
 ましてや府教委は最初から、吉田証言は教科書の記述に何ら影響を与えていないと知っていたのですから。
 ならばなぜ調査しなかったのか? 調査する必要を思いつきもしなかったのか?

 これから先は推測ですが、だれもが思っていることです。
 この問題は学術論争ではなく、「政治」だから。大阪府教委は維新の政治的圧力に対して徹底的に抵抗する気はなく、最初から膝を折っていたのです。
 それでも、府教委のことを好意的に判断するならば、維新の補助教材に対する圧力に対して2月20付通知「学校における適正な指導及び教材の適正な取扱について」で対応したことは、それなりに抵抗した結果なのだとは思います。そしてそれでも教材を作らなければならないことを迫られたとき、「強制連行はなかった」「『慰安婦』問題は虚偽である」という維新の意向を排し、「慰安婦」問題を否定しきれなかった安倍政権のブレを掲載したことは、府教委なりの抵抗だったのかも知れません。
 しかしそれは、残念ながら府教委の自己満足でしかありません。
 府教委は結局、教育ではなく、政治を選択したのです。
 教育行政が責任を持たなければならないのは、子どもたちの教育に対してだけです。子どもたちの教育に対してだけ誠実でなければならず、他のベクトルは一切不要です。教育行政に政治介入を許すなど、教育の「死」です。
 このような教材を押しつけられ、日本軍「慰安婦」問題のなんたるかを一切教えられない高校生たちは、不幸としかいいようがありません。

 府教委は、今回で交渉を終わらせようとしています。今回で十分に誠実に対応したと。
 しかし府教委は私たちの質問に、何も答えていません。
 なぜ、補助教材に被害事実を載せることができないのか? なぜ日本軍「慰安婦」問題のなんたるかを教えることができないのか?
 それが政治だからとか、維新の圧力に火を注ぐとか、そんな理由は納得できません。

 大阪府教委は、今一度、「教育とはなにであるのか?」と自問して欲しいと、切に願います。教育行政に誇りを持ち、生徒に対してだけ責任を持って欲しいです。
 私たちは何度でも大阪府教委に交渉を申し入れます。何度でも何度でも、日本軍「慰安婦」被害者の証言を、被害事実を突きつけます。そして正しい歴史認識に基づく日本軍「慰安婦」問題の教育を追求します。
 日本軍「慰安婦」被害者のために! そして未来を担う高校生たちのために!

12/10 大阪市議会教育子ども委員会で教科書問題が取り上げられます!

子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会では、9月に続き11月18日にも、
「大阪市教育委員会が8月5日、異常な方法により育鵬社教科書を採択した件につき再審議を求める陳情書」を
大阪市議会に提出しています。

12月10日の大阪市議会教育子ども委員会で議論される予定です。
是非、大阪市議会の教育子ども委員会の傍聴をお願いします。

◇日時 12月10日(木)13:00
◇場所 大阪市役所P1階傍聴受付
◇定員 10名。傍聴希望者は委員会開会予定時刻の30分前から先着順(ただし30分前の時点で希望者が定員を超えている場合は抽選)

*******************************

大阪市教育委員会が8月5日、異常な方法により
育鵬社教科書を採択した件につき再審議を求める陳情書

                子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会 

[陳情趣旨]

 去る10月5日、教育こども委員会陳情第77号として継続審議となった標記案件について、当日の質疑、およびその後の調査から判明した事実に、以下のようなものがあります。

 ①問題となっている育鵬社は、フジ・メディア・ホールディングス(旧フジテレビ)の完全子会社(社長が出向し資本金も100%出資)であり、もう一方の当事者である高尾元久・大阪市教育委員も、同メディア・ホールディングスが45.27%の株を所有する「グループ会社」の一員=産経新聞社の重職を歴任してきた人物です。そして今年2月 27日まで、同本社の委託業務アドバイザーとして嘱託勤務していました。

 ②育鵬社と高尾教育委員を仲介した日本教育再生機構(機関誌『教育再生』を発行)も、育鵬社の共同事業者です。したがって独禁法による規制(教育委員等に対し不当に自己と取引するよう誘引することが禁止されるく第2条第9項6号ハ〉)を受ける利害当事者でありながら、採択関係者である大阪市教育委員会の高尾委員に対し、同機構の機関誌(”雑誌“ではない)へ4回にわたり執筆等に協力するよう誘引し、同委員も、同機構が育鵬社関連であることを知りながら応じました。これは「地方教育行政組織及び運営に関する法律」第7条が定める「非行」に該当すると考えられます。

 ③そして高尾委員は、平成26年の小学校教科書以降の採択が、前年までとうってかわり、大阪市の教育行政基本条例等が選定基準となるという秘密事項を、機関誌『教育再生』同年3月号へ漏洩させています(教育委員会による公表は5月27日)。これも前項にある「非行」に該当します。このとき高尾委員は、育鵬者及び日本教育再生機構と強いつながりある産経新聞のアドバイザーとしてまだ勤務していました。

 ④さらに育鵬社は、その情報を、今年中学校で採択される教科書の検定申請本の完成が最終段階を迎える提出期限(平成26年5月29日)前に手に入れることが可能となりました。育鵬社のみにこうした便宜をはかったため、今年8月5日の教育委員会において、高尾氏を含む3人の委員は、上記採択基準を示し、それに合致した教科書として育鵬社を推薦し採択されたものです。これら一連の流れは、上記「非行」行為を3重にするのみならず、「公正かつ適正」な教育行政を定めた「地数行政法」第1条の2に違反しています。

 ⑤高尾氏にかかるこれら一連の事態は、教科書の採択を公正なものとするため大阪市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会が定めた「調査員の資格要件及び責務」にことごとく反するものです。今年8月5日の教育委員会において、もしこの高尾氏が欠けていた場合、育鵬社と他社を推す委員は2名の同数となり、同社の採択は行われませんでした。さらに採択基準に沿わない教科書であれば、あり得ない採択でもありました。一面的な内容であるため他社教科書を副教材として使用する決定も、またありえませんでした。

 ⑥さらに、今回の異常な採択がなされたもうひとつの背景として、学校現場における教科書の評価が教育委員会へ伝わらない異常な仕組みが、ここ1年間で急速に作りあげられたことが判明しました。こうして、教育委員6人による一方的な採択が現出し、8月5日の傍聴者を閉め出す姿勢へとつながったと考えられます。
 以上の新事実を踏まえ、以下の陳情の採択をお願いいたします。

[陳情項目]

 大阪市教育委員会は、中学校の歴史・公民の教科書について8月5日、育鵬社の教科書を当該利害関係者を加え採択したことを撤回し、改めて、高尾教育委員を審議から外す公正な形態をとった上で、また学校意見が同委員会へ伝えられるシステムを回復させ、傍聴者を可能な限り増やした公開の場において、「国際人としての日本国民を育て」「主体、的学習」につながる教科書を採択する責務を果たすよう再審議を求めます。
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