もう一つの「解説書」改定問題
高嶋伸欣さんの、メールの転載です。
沖縄にいる間、気になりながら発信できなったことがあります。
1 それは学習指導要領の「解説書」改定に関するものです。本来、「解説書」は8~10年周期で改定される学習指導要領本体の改定に付随して改定されるものです。さらに、検定が小・中・高(2年間)の順に4年周期で行われるのに合わせて、小学校の検定の時から適用できるように策定されるのが合理的な手順でもあり、この原則はほぼ守られてきていました。
2 にもかかわらず、今回はこうした原則をまったく無視した形で強行されているのは、政権が交代したためという以外に根拠が見いだせませんから、教育内容への政治的な介入そのものであることは明らかです。
3 この観点から、多くの皆さんが、検定基準の改定と併せて批判、反対の声を挙げられている訳ですが、近隣諸国への挑発的な意味を持つ「領土に関する教育の充実について」の項に関心が集中してしまい、もう一つの「自然災害における関係機関の役割等に関する教育の充実について」の項の改定の問題点が、見落とされているように、思われます。
4 文科省が1月28日に実施した「指導書」の改定では、<地理>分野の自然環境学習などにおいて、従来の自然災害の多発状況に合わせた防災対策の実態や防災意識の必要性を学ばせる、とう記述のあとに、次のような表現が今回加えられました。
「なお、自然災害については、防災対策にとどまらず、災害時の対応や復旧、復興を見据えた視点からの取り扱いも大切である。
その際、消防、警察、海上保安庁、自衛隊をはじめとする国や地方公共団体の諸機関や担当部局、地域の人々やボランティアなどが連携して、災害情報の提供、被災者への救援や救助、緊急避難所の設営などを行い、地域の人々の生命や安全の確保のために活動していることにも触れることが必要である」と。
5 一読しただけでは、問題がないように見えます。しかし、24日の国会で、安倍首相は施政方針演説の中で、次のように殊更に自衛隊の災害救助活動を賛美しているのを見ると(演説の全文を主要紙は掲載しています)、安倍首相と下村大臣の下心が透けて見えるように思えるのです。
「伊豆大島への災害派遣。活動中にお位牌を発見した自衛隊員は泥を自らの水筒の水で洗い、きれいに拭き取りました。その様子をテレビで見た方から自衛隊に手紙が寄せられました。
『本当に涙が出ました。あの過酷な条件の中で自衛隊員の心のやさしさに感動しました』
その手紙は、こう続きます。
『私はもう80歳になりますが、戦争を知っている世代としては最後の世代ではなかろうかと思います。このようにたくましく、また、心やさしい自衛隊員がおられる日本は安心です』
自衛隊は、何者にも替え難い国民の信頼を勝ち得ています。黙々と任務を果たす彼らは、私の誇りです。
海を挟んだ隣国フィリピンの台風被害でも、1200人規模の自衛隊員が緊急支援を行いました。
避難する方々を乗せたC130輸送機は、マニラ到着とともに、乗客の大きな拍手に包まれました。『サンキュー、サンキュー』子どもたちは何度もそう言いながら、隊員たちに握手を求めてきたそうです」と。
6 折しも、安倍政権は道徳教育の教科化と道徳の教科書作りを強行しようとしています。しかも、歴史教科書には政府見解の記述を義務付ける検定基準を設けたばかりです。道徳教科書への適用も、時間の問題でしょう。
首相の国会演説に盛り込まれた、自衛隊賛美のこの部分を道徳教科書に掲載すれば、自民党系の首長が牛耳る教育委員会が競って採択すると見込めます。 教科書会社にとっては、矜持を問われることになるケースでもありますが、安倍首相も小細工が過ぎはしないでしょうか。
7 ともあれ安倍首相の思惑が、災害救助にかこつけた自衛隊賛美の風潮形成をもって改憲、国軍容認の世論誘導を図ることにあることは、明らかです。やはりこの時期にこうした内容を「指導書」に強引に加筆する
不自然さの最大の要因はそこにあるとして、警戒する必要がある、と思えるのです。
8 この加筆部分が悪用されないように、執筆者や編集者を支える取り組みができるように、全国で情報交換などを進めたいと思います。
また、この部分を逆手に活用する方法もいろいろあると思います。「災害情報の提供」ということでは、福島の原発事故での情報隠しの事実が、教材に使えます。自衛隊の活動として救助活動が強調されるのであれば、迷彩服よりも消防のレスキュウーの鮮やかな色の服の方が、避難・遭難者の側からも気付き易いという指摘があります。車両の色についても同じです。
9 自衛隊のイメージアップが災害救助活動強調でされるのを、あまり問題にしないでいると、その先には在日米軍の災害救助活動まで教科書に記載するようにと言い出しかねないのが、安倍政権ではないでしょうか。安倍政権のお先棒を担いでいる「産経新聞」ではそうした紙面展開がすでに進行中なのですから。
10 以上、勘ぐり過ぎと言われそうですが、こと安倍政権に関しては用心に用心を重ねておくのが最善という思いで、まとめてみました。杞憂ですめば幸いですが。
関連の情報をお持ちの方から、何か情報を提供頂ければ幸いです。
11、 ちなみに、『毎日新聞』はこのことを、1月27日朝刊で報道しています。また、上記の「解説書」の改定部分については、文科省のHPで公表されています。
文責は高嶋伸欣です。 拡散・転載は自由です。
沖縄にいる間、気になりながら発信できなったことがあります。
1 それは学習指導要領の「解説書」改定に関するものです。本来、「解説書」は8~10年周期で改定される学習指導要領本体の改定に付随して改定されるものです。さらに、検定が小・中・高(2年間)の順に4年周期で行われるのに合わせて、小学校の検定の時から適用できるように策定されるのが合理的な手順でもあり、この原則はほぼ守られてきていました。
2 にもかかわらず、今回はこうした原則をまったく無視した形で強行されているのは、政権が交代したためという以外に根拠が見いだせませんから、教育内容への政治的な介入そのものであることは明らかです。
3 この観点から、多くの皆さんが、検定基準の改定と併せて批判、反対の声を挙げられている訳ですが、近隣諸国への挑発的な意味を持つ「領土に関する教育の充実について」の項に関心が集中してしまい、もう一つの「自然災害における関係機関の役割等に関する教育の充実について」の項の改定の問題点が、見落とされているように、思われます。
4 文科省が1月28日に実施した「指導書」の改定では、<地理>分野の自然環境学習などにおいて、従来の自然災害の多発状況に合わせた防災対策の実態や防災意識の必要性を学ばせる、とう記述のあとに、次のような表現が今回加えられました。
「なお、自然災害については、防災対策にとどまらず、災害時の対応や復旧、復興を見据えた視点からの取り扱いも大切である。
その際、消防、警察、海上保安庁、自衛隊をはじめとする国や地方公共団体の諸機関や担当部局、地域の人々やボランティアなどが連携して、災害情報の提供、被災者への救援や救助、緊急避難所の設営などを行い、地域の人々の生命や安全の確保のために活動していることにも触れることが必要である」と。
5 一読しただけでは、問題がないように見えます。しかし、24日の国会で、安倍首相は施政方針演説の中で、次のように殊更に自衛隊の災害救助活動を賛美しているのを見ると(演説の全文を主要紙は掲載しています)、安倍首相と下村大臣の下心が透けて見えるように思えるのです。
「伊豆大島への災害派遣。活動中にお位牌を発見した自衛隊員は泥を自らの水筒の水で洗い、きれいに拭き取りました。その様子をテレビで見た方から自衛隊に手紙が寄せられました。
『本当に涙が出ました。あの過酷な条件の中で自衛隊員の心のやさしさに感動しました』
その手紙は、こう続きます。
『私はもう80歳になりますが、戦争を知っている世代としては最後の世代ではなかろうかと思います。このようにたくましく、また、心やさしい自衛隊員がおられる日本は安心です』
自衛隊は、何者にも替え難い国民の信頼を勝ち得ています。黙々と任務を果たす彼らは、私の誇りです。
海を挟んだ隣国フィリピンの台風被害でも、1200人規模の自衛隊員が緊急支援を行いました。
避難する方々を乗せたC130輸送機は、マニラ到着とともに、乗客の大きな拍手に包まれました。『サンキュー、サンキュー』子どもたちは何度もそう言いながら、隊員たちに握手を求めてきたそうです」と。
6 折しも、安倍政権は道徳教育の教科化と道徳の教科書作りを強行しようとしています。しかも、歴史教科書には政府見解の記述を義務付ける検定基準を設けたばかりです。道徳教科書への適用も、時間の問題でしょう。
首相の国会演説に盛り込まれた、自衛隊賛美のこの部分を道徳教科書に掲載すれば、自民党系の首長が牛耳る教育委員会が競って採択すると見込めます。 教科書会社にとっては、矜持を問われることになるケースでもありますが、安倍首相も小細工が過ぎはしないでしょうか。
7 ともあれ安倍首相の思惑が、災害救助にかこつけた自衛隊賛美の風潮形成をもって改憲、国軍容認の世論誘導を図ることにあることは、明らかです。やはりこの時期にこうした内容を「指導書」に強引に加筆する
不自然さの最大の要因はそこにあるとして、警戒する必要がある、と思えるのです。
8 この加筆部分が悪用されないように、執筆者や編集者を支える取り組みができるように、全国で情報交換などを進めたいと思います。
また、この部分を逆手に活用する方法もいろいろあると思います。「災害情報の提供」ということでは、福島の原発事故での情報隠しの事実が、教材に使えます。自衛隊の活動として救助活動が強調されるのであれば、迷彩服よりも消防のレスキュウーの鮮やかな色の服の方が、避難・遭難者の側からも気付き易いという指摘があります。車両の色についても同じです。
9 自衛隊のイメージアップが災害救助活動強調でされるのを、あまり問題にしないでいると、その先には在日米軍の災害救助活動まで教科書に記載するようにと言い出しかねないのが、安倍政権ではないでしょうか。安倍政権のお先棒を担いでいる「産経新聞」ではそうした紙面展開がすでに進行中なのですから。
10 以上、勘ぐり過ぎと言われそうですが、こと安倍政権に関しては用心に用心を重ねておくのが最善という思いで、まとめてみました。杞憂ですめば幸いですが。
関連の情報をお持ちの方から、何か情報を提供頂ければ幸いです。
11、 ちなみに、『毎日新聞』はこのことを、1月27日朝刊で報道しています。また、上記の「解説書」の改定部分については、文科省のHPで公表されています。
文責は高嶋伸欣です。 拡散・転載は自由です。
スポンサーサイト